国交省:事前対策でコスト3割縮減/大規模盛土造成地の宅地防災、安全性把握へ計画作成
国土交通省の有識者会議は、大規模盛土造成地における
宅地防災対策の方向性を示す報告書をまとめた。事前対策
を実施することにより、地震で滑動崩落が発生した後の
復旧に要するコストを3割低減できると、事業費縮減効果
の試算結果を初めて示し、事前対策の意義を強調。年度内
に国交省が全国の大規模盛土造成地マップを公表する予定
のため、今後は国交省が目標を設定して安全性把握と対策
工事を計画的に進める必要があるとし、まずは地方自治体
による安全性把握調査の計画作成を2022年度までに完了
させる目標を設定すべきと提言している。
19年6月に設置した大規模盛土造成地防災対策検討会が
まとめた。
盛土面積3000㎡以上で、盛土の高さ5m以上などの基準
を満たす大規模盛土造成地は、国交省が把握しているだけ
で、19年11月末時点で全国に約3万5000カ所ある。
検討会は、地震に伴って滑動崩落が発生することで、
人的被害や財産被害、生活再建の遅れ、公共施設の機能喪失
などが生じ、復旧には多額の費用と労力を要すると指摘。
それに比べて擁壁工や抑止杭工、アンカー工、地下水・地表
水排除工などの事前対策は、阪神・淡路大震災や東日本
大震災の事例を基に3割のコスト削減効果があると試算し、
事前対策を推進すべきとの見解を示している。
国交省が年度内に公表する大規模盛土造成地マップは、
直ちに危険性がある個所ではなく、安全性を確認すべき盛土
造成地のため、次のステップとして安全性を把握する第2次
スクリーニングが必要と指摘。国交省が目標を設定して推進
する方法が適当として、地方公共団体が22年度までに第2次
スクリーニングの計画を作成する短期目標の設定を求めた。
中期的な目標は、25年度までをめどに第2次スクリーニング
を進捗するための目標設定が望ましいとの考えを示したもの
の、都道府県や市町村の状況を確認しながら設定する必要が
あるとし、具体的な数値は挙げていない。
また、大規模盛土造成地の中でも立地適正化計画で定める
居住誘導区域内の個所は、優先的に第2次スクリーニングと
対策工事を進める必要があるとして、立地適正化計画で宅地
の安全確保に取り組むことを求めた。検討会の指摘を踏まえ、
国交省は防災指針の作成を立地適正化計画制度に位置付ける
都市再生特別措置法など改正案を今国会に提出している。
2020年3月16日7:24 PM